2012年2月16日、東京地検特捜部と警視庁は、オリンパスの菊川前社長ら7人を逮捕した。
容疑は、粉飾決算による金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)。
逮捕されたのは、
オリンパスの前社長・菊川剛容疑者(70)
オリンパスの元副社長・森久志容疑者(54)
オリンパスの元監査役・山田秀雄容疑者(67)
野村証券の元社員でコンサルタント会社社長・横尾宣政容疑者(57)
野村證券の元社員・中川昭夫容疑者(61)
野村證券の元社員でコンサルタント会社取締役・羽田拓容疑者(48)
コンサルタント会社元取締役・小野裕史容疑者(50)
の7人。
オリンパスは、1990年代、財テクの失敗により1千億円を超える含み損が生じた。
これを、元証券マンらと結託し、英領ケイマン諸島に創設したファンドに『飛ばし』た。
さらに、企業買収で支払ったお金を還流させ、この損失の穴埋めに利用した。
【オリンパス問題経緯】
2011年8月、月刊誌に、オリンパスが過去の企業買収において不透明な取引と会計処理を行なっていたと報じられる。
月刊誌の報道を受け、当時の社長・マイケル・ウッドフォード氏が調査を開始。
一連の不透明な企業買収は、菊川会長、森久志副社長が関わっていたことがわかり、ウッドフォード氏は両氏の引責辞任を求めた。
ところが2日後、取締役会において、ウッドフォード氏が社長を解任された。
社長解任という騒動により(大きく報道されることにより)、オリンパスの不透明な取引と会計処理が明らかに。
それが、株価の暴落やオリンパスに対する批判となった。
結果、オリンパスは第三者機関を立ち上げ(11月1日)、調査を行うことに。
2011年11月8日、第三者委員会が、過去の買収案件は、90年代の有価証券投資等による損失(含み損)を解消するために利用されていたと発表。
(20年間にわたって、損失を隠していた。含み損は約1177億円)
2012年1月20日、東京証券取引所は、監理銘柄(審査中)に指定されていたオリンパスについて、上場廃止しないと発表。
ただし、上場契約違約金の徴求を行うと共に、特設注意市場銘柄に21日付けで指定。
(上場契約違約金金額は、1000万円)
この東証の裁定に「モラルハザード」との意見が多数。
(オリンパスと同様、有価証券報告書に虚偽の内容を掲載したライブドアは、上場廃止に)
(ライブドアより悪質なオリンパスが、上場廃止とならなかったため)
<問題となった企業買収>
2008年、イギリスの医療機器メーカー・ジャイラス・グループ買収時に、ケイマン諸島に登記されていた投資助言会社「AXAMインベストメント」などに対し、ジャイラス買収額(2,117億円)の32%に相当する総額687億円もの報酬が支払われた。
(企業買収のコンサル料金は通常1%から5%が相場)
そして、AXAMは、その3ヵ月後、ケイマン諸島における金融業登録料未払いにより登録が取消された。
さらに同時期、アルティス(資源リサイクル)、ヒューマラボ(化粧品・健康食品販売)、ニューズシェフ(電子レンジ調理容器製造)を総額734億円で買収しながら、2009年3月期決算で、約557億円の減損処理を行なった。
*オリンパス事件の経緯や概要は、現在捜査中のため、今後大きく変わってくることもあります。
【オリンパス】
日本の光学機器・電子機器メーカー。
(デジタルカメラ、顕微鏡、血液分析器、小型録音機などを製造、販売)
本社…東京都新宿区西新宿。
資本金…483億32百万円(2009年3月31日現在)
売上…9800億円強(連結、2009年)
利益剰余金は約1640億円、営業利益は毎年500億円前後、有利子負債は7000億円強。
売上における事業別比率は、医療分野が約40%、情報通信分野が約20%、映像分野が約20%、その他約20%。
胃カメラを製品化した企業として有名で、内視鏡(医療分野)では世界シェアの75%を押さえている。
カメラ(デジタル一眼レフ)では、キャノン、ニコンに次ぐ3番目だが、上位2社には離されている。